『健康長寿の秘訣』第二版にあたって
昨年末、伝統ある丸の内朝飯会で健康長寿をテーマに講演の機会を頂戴し、視聴された皆さまからお勧めをいただき記録の冊子を作成いたしましたところ、このたび重版となりました。 講演では、我が一家の原点に広島の祖母と母の原爆被爆体験がある旨、お話ししましたが、折しも講演後まもなく母・智佐子が他界、供養の意味で、奇しくも出現した虹を背景に撮影された入院先での母の写真と、核廃絶と世界平和を語り続けた母の最後のスピーチ原稿を、冊子に添えました。 雨後に現れた虹は、原爆という史上最悪の事態を乗り越え平和に尽くす人生に転じた母を象徴し、その人生を賞讃するものに見えます。 この写真を撮り最期を看取ってくださった病院では、残された原稿をロビーに額装・展示してくださってお ります。母の思いを大切にしてくださった広島市安佐南区の医療法人社団八千代会メリィホスピタル(姜仁秀(カン・インス)理事長、姜彗(カン・ヘ)副理事長)の皆さまには、心からの感謝を捧げる次第です。 今後の喫緊の課題としては、私の友人で尊敬する医療法人社団和風会の石田信彦理事長の持論でもありますが、この新型コロナ感染症を、国民の行動規制を法的にコントロール出来る感染症2類から、インフルエンザと同じ扱いの5類にすることとして、経済の立て直しをはかることです。そして、国産ワクチンと治療薬を実現させ、さらには今後の新たな感染症への備えに国をあげて取り組めるよう、日本の医療体制改革を進めることであり、私なりに様々な制度や施策の立ち上げに尽力してまいりたいと考えております。 具体的には、講演でお話しした医療ビッグデータ活用協議会(内海良夫会長)と一般社団法人ALCO(アンチエイジングリーダー養成機構、白澤卓二理事長)との連携、それに加えて和風会の石田理事長との繋がりを更に深め、車の両輪のようにして、改革を強力に進めてまいる所存です。 ごく最近のことですが、知勇兼備の女性政治家を育てるための勉強会の折、陽明学をはじめ東洋思想に詳しい89歳になられる行徳哲男先生との再会がありました。 行徳先生は「コロナ禍をはじめ世界は大変な事態に見舞われているが、『大変』とは『大きく変わる』ということである」と、話されました。 私どもも大きく変わって、事態に取り組んでまいらなければなりません。 さらに先生からは「死而後已」(=死して後已(や)まん)の揮毫をいただきました。これは、諸葛孔明の後出師の表にあって「死ぬまで、生ある限り戦い続ける」とのこと。吉田松陰が自らの生き方の骨髄とした言葉とうかがいました。 その上、私からはALCOのパンフレットを差し上げて「アンチエイジング」についてお話ししたところ、「逆順入仙」(=順に逆らって仙に入る)との言葉を教わりました。これは幸田露伴が好んで使った言葉で、意味は「年齢には逆らって行動することで仙境に入る」とのこと、ALCOの骨格となる言葉であると思いました。 それから、「経営のバックボーンに哲学を持て」と一般社団法人日本経営道協会を主宰されている市川覺峯(かくほう)先生にこの冊子を差し上げたところ、「動中の工夫」の揮毫をいただきました。これは江戸中期の白隠慧鶴(はくいん えかく)の『遠羅天釜』にある「動中の工夫は静中に勝ること百千億倍す」からの言葉です。「まず行動を起こせ、そこから良い工夫が生まれる」との意味で、あらゆる場面に通用すると捉えました。 以上を踏まえ、まずは深澤中斎先生から教わった「知足」(=足るを知る)に、行徳先生からの「死而後已」と「逆順入仙」、そして市川先生からの「動中の工夫」を、我が座右の銘として、自らを正し、今後とも生ある限り走り抜いてまいる覚悟です。 なお、本冊子は、公益財団法人 国策研究会の事務局長である吉田弘氏により、月刊誌『新国策』(令和3年5月号)で取り上げられ、離島政策文化フォーラム共同代表で民俗宗教史家の菅田正昭先生による書評が掲載されました。ここに転載させていただきます。 2021年6月20日
書評『新国策』(令和3年5月号)掲載 評者 菅田正昭(民俗宗教史家)
発行日(初版)の三月十六日という日付は、竹岡さんが平成十六年(二〇〇四)二月に無実の罪で逮捕され、二十二日間の拘留から釈放された記念すべき日である。その釈放は唱題することによって勝ち取られたものらしいが、その一方で、拘留時の厳しい取り調べによるストレスが原因で食道がんを発症してしまった。それを手術によって克服したものの、二度目の癌として前立腺がん、さらに三度目として皮膚がんになってしまう。もちろん、竹岡さんは二度目も三度目も乗り越えてしまう。 その克服の過程で、いろいろな人びとと出会い、知り合う。単なる出会いではなく、竹岡さんの場合は、そのとき知識や智恵の交換・交流が行われる。一見、ミスマッチのような出会いにおいても、「一期一会」をモットーとする竹岡さんは、自らの立ち位置を初対面でも吐露してしまう。ついつい、自分が池田大作氏を師匠とする熱烈な創価学会員であることを語ってしまうのだ。当然、相手は面食らうか、たじろいでしまうが、思想性よりも志操性を重視する人はやがて竹岡さんに引き込まれてしまう。 この本を読むと、そうした人びとの名前が出てくる。とくに、アンチエイジングを推進している白澤卓二氏との出会いの中からALCO(アンチエイジングリーダー養成機構)が生まれた。白澤氏の「食のピラミッド」「健康長寿の方程式」をはじめ、三浦雄一郎氏・豪太氏父子の運動(登山)、もんげーバナナの田中節三氏……等々。さまざまな出会いの契機を創造的に結び付け、良い意味で人びとを巻き込んできた竹岡さんの〈逮捕〉後十七年間の人生が、否、誕生以前からのヒロシマ原爆の被爆者でもある竹岡家の歴史の中で語られる。昨年(令和二年)十二月三十一日に九十二歳で逝去されたお母さんの、被爆体験の語り部でもあった竹岡智佐子さんにまつわる話もいい。 実は、竹岡さんが逮捕される前日、わたしは竹岡さんと永田町で昼食を共にしている。二人の共通の友人であるO氏と鰻を食べたのだ。そのO氏がこの本を読んだあと、竹岡さんのことを「鉄人」にして「哲人」と評した。恐らく三度の難病を乗り越えることができたから「鉄人」であり、その克服の哲理が実践的にこの本で語られているから「哲人」なのであろう。すなわち、病気にならないことが鉄人の証ではなくたとえ病気になってもそれを乗り越えることが鉄人なのだ、という意味に違いない。 もちろん、竹岡さんはALCOを創設しているように、多くの人びとにアンチエイジングを共有してもらおうとしている。絵画の発想を求めての、逮捕前からエジプト旅行に同行している田渕隆三画伯にはヒマラヤ大壁画を描いてもらうため、三浦豪太氏を先達に高尾山の登山から始めている。本書の副題に〈「食事・運動・生きがい」の充実を目指して〉とあるように、生命力(イノチ)の総合的、創造的充実を目指しているように思える。まさに、天衣無縫の竹岡誠治氏はアンチエイジングの鉄人・哲人なのである。 |