2009年5月22日 1.人類の故郷 国破れて山河あり オリエントの光はいのちを蘇生する。ここにこそ、死を吸収し生を生み出すところがあった。我々の人間の故郷に帰るような旅であった。人類五千年が目の前にある。どんな理性もなしえないが、感性だけはストレートに生命の交流をすることができる。わくわくと心躍らせながら古代が今にあり、今が古代となる。ピラミッドの上に茜色の空があり、宵の明星が光っていた。智慧の光がおりてくる。 2.冬のピラミッド 太陽にのぼる階段 エジプトでは、毎日変わらず昇る太陽に、永遠の生命と普遍の実体を重ね合わせて見た。そして太陽といっしょになることが、永遠の生命の感得であった。その触媒としてピラミッドがあった。ピラミッドこそ、この太陽に近づき、太陽といっしょになる、太陽にのぼる階段であった。いっさいを育む慈愛の力、闇を滅して正邪を分つ力、太陽だけは世界の誰人にとっても平等な富であった。 3.イムへテプ ピラミッドの設計者 人間は、生命という無眼の富を持っている。古代エジプト第三王朝ジェセル王の宰相イムへテプ。彼はピラミッドの設計者として知られている。建築家にして哲学者、学者にして賢者(彫刻家でもあり、医師でもあったという)。千年の長きに亘って、書記の代表として尊敬を受けた。彼は、無常の世界に何を聞きとり、何を後世に記したものか。 人間の自覚的行為が入ることによって、 有史以来五千年、人間のはかない歴史のなかでピラミッドだけは過ぎ去っていく時間をあざ笑うかのように厳然と、宝塔のように我々の眼前にそびえ立っていた。運命と戦い内なる運命に出合ったピラミッド。生命は永遠のものである。――この真実を表現するピラミッド。自覚の生命が、永遠を表現した。 |