2009年10月15日 「終着地はアメリカだよ」 それは、2005年11月に「太陽とロータス」を編んだとき「ロータス・ロードのキーワード」として語り合っていた。ちょっと、その話もここで紹介しておきたい。 竹岡 今後のロータス・ロードの旅は、ありとあらゆる芸術の分野の人を連れて行くべきだと思います。一緒に行って確かめて、その上でそれぞれが作品にしていくというふうにしないと、ツタンカーメンの作品群に匹敵する動きにはならないでしょう。指揮官も必要だし、総合的にやらなくてはなりませんから。 田渕 そうですね。一人で動いていては、あんなことはできませんね。やりがいのある、一生の願業ですから、準備をしっかりして取り組みたいと思います。 渡辺 そういう世界的なものを作ろうとする時にこそ、それに参加する一人ひとりも輝いてくると思います。 田渕 ところでそのロータス・ロードの旅の到着点は日本ですが、更にその先のアメリカへの橋渡しがあって目指す太平洋文明の完成となります。巨大資本の大元、アメリカにこの歓喜の文明を伝えることができれば、現代の頽廃の病に大きな変化が起こると思います。アメリカにはあらゆる民族が集まっています。現代の世界の縮図です。 かつて、巨大なローマ帝国の頽廃を救ったのは、キリスト教でした。そのキリスト教文明が行き詰まった今、古代エジプトから流れ来る生命の哲学、さらにはそれを現代に引き継ぐ仏教に、その役割が求められていると思います。 竹岡 アメリカには、それなりの美術作品は渡っていないんですか。 田渕 そんなことはありません。アメリカには、いいものがたくさん渡っています。特に東海岸の各都市には、素晴らしい美術館がいくつもあります。アメリカの知性の中心、ボストン近郊のハーバード大学にも、見事な付属美術館があって、印象派の作品などはフランス本国よりもいいものがあると思うほどです。美術史的に重要な作品も多くあります。ニューヨークのメトロポリタン美術館にも驚くべきエジプトの美術品が収まっています。 竹岡 その決勝点を、いつまでとすればいいですかね。 田渕 やはり、近くは二〇三〇年です。それに焦点を定めてやります。 竹岡 私は支援者を拡大します。富を何に使うべきかを世に示したいんです。 松下 "太陽とロータス"を基軸に置いたときに、全てが生かされるということですね。 2003年5月末から始まった、美術紀行「花のアフロディテ ギリシャ・イタリア編」「太陽とロータス エジプト・フランス編」「サン・ロータスの道 日本・東洋編」全3巻の足かけ5年に亘る足跡の結晶を確かめに、アメリカ東海岸の旅が始まったのは9月15日のことであった。今回の旅は5人。松下氏が四国の徳島から夜行バスで、渡辺氏が岡山から新幹線で成田に合流した。 「太陽の運行によって美が生まれ」 ナイアガラには2泊したが、別便で送った肝心の田渕先生のキャンバスが届かなかった。 シカゴに戻ってきた私たちは、目当てのシカゴ美術館に向かった。美術館に着くなり、「R66の起点なんだ、ここは」と、その前ではしゃぐ渡辺さんは子供のようだった。美術館に入ると田渕先生は、まずルノアールの絵をすぐに描き始めた。一点に止まるこの姿を、何度見ただろうか。 シカゴ美術館を見た夕方、シカゴからワシントンに移動した。飛行機からワシントンに降りていくとき、窓からオベリスクが見えた。この目でオベリスクを見た時、アメリカは心の奥底で東洋の心を待っているのでは無いかと思った。 「壮麗なマンハッタンよ! 「創造の女性」がやって来たのである、」 「標識は逆転し、地球はとり囲まれた、 またこの本の解説には「この作でホイットマンは日本からの遠来の賓客を迎えることによって、これまで離ればなれになっていた人類が、神秘的な文化の淵源地東洋から訪れて来たことによって、東西融合の夢が実現した歓びを歌ったもので、後の『草の葉』第五版(一八七一年)に発表される名篇「インドへの航路」の前触れとも見るべき作である。」と。 統治していく根底に、東洋の心を持つか持たないかは人類にとって大事な問題だと思う。フリーア美術館で東洋美を見てさらにその思いを強くした。 歴史博物館に行ったとき、国旗が国宝になっているのを見て、文化の違いを感じた。確かに街を歩いていてもビルから国旗が垂れ下がり、イベントでは国旗を振って喜びを現す国民性は日本とは違う。 ナショナルギャラリーにはいると、ダヴィンチの少女の絵の前で田渕先生が動かなくなった。 ここでも印象派の絵を堪能した。田渕先生が描いていると係官が座って描いてくれと、敷物を持ってきてくれたのには、アメリカの懐の深さのようなものを見た気がした。 そのあとリンカーン記念堂に行って、あのリンカーンと対面した。ここはもう神殿になっていると感じた。リンカーンはアメリカにとって神の存在なのだろう。 |