平成27年1月 緒方由美子さんのカンボジア・モンドルバイ村支援について カンボジアの支援先であるモンドルバイ村は、緒方由美子さんやその仲間たちの継続支援活動により、変化が現れてきたように思います。「継続こそ力なり」まさにその言葉をひたむきに実行した姿に1人の人間として感動しています。 今を去ること20年前、カンボジアが平和を取り戻した証として、安全なアンコールワットをアピールし、「対人地雷被害者へ愛の義足を!」のスローガンを揚げ、アンコールワット国際ハーフマラソンの開催に私達は動き出したのです。 緒方さんをはじめ大阪女子国際マラソンを企画運営してきたサンケイスポーツの結城肇氏や、オリンピックのマラソンメダリストの有森裕子さん達が企画したもので、私は「NTTドコモ」や「かねふく」等の協賛企業を集める協力をしました。 当時のカンボジアでは、“走ることはすなわちポルポト派から逃れて生命を守ること”と同義でした。何の意味もなく走っている人に手をふったり、拍手することは考えられないことだったのです。私たちは、「マラソン」という競技があって、力の限り走る人たちに対して沿道に出て応援するといった基本を説明することから始めなければなりませんでした。 その甲斐あって、第1回大会(1996年12月22日)は無事に開催されました。その後、人道支援をする緒方さんの姿をみたシェムリアップ州知事が来ました。「是非とも支援してほしい村がある」。緒方さんは州知事と2人でその村へ行きました。 そこが、地雷被害で手足を失くした人々が大勢集められていたモンドルバイ村でした。モンドルバイ村の悲惨なありさまを目の当たりにしたとき、緒方さんは国際ハーフマラソンの運営支援と共に村の支援活動をすぐさま開始していったのです。 緒方さんが、このモンドルバイ村で最初に実行したのは、戸籍調べでした。草むらの中に、電気も、水道も、何もない。ただ掘っ建て小屋があるだけ。そんな中に約600世帯、3,000人が住んでいました。 その後、冷え込む夜が続く雨季には、身体を温める毛布とマラリア予防のカヤを届ける運動を展開、さらには孤独な高齢者が多いと見ると、敬老会を開催するなど、実情に合わせて、村作りから支援物資の配布の方法まで村人と共に考え、ルールを作り、、カンボジアでは初めてのことを定着させていきました。 日本から送ったコンテナの支援物資に多額の税金を掛けられるという現実と戦い、緒方さんは自分で物資1個1個を確認するという辛抱強い努力を惜しみませんでした。 現地での活動では、私は井戸掘りの手伝いもしました。生活の基本である水の確保、食べ物の確保、日本にいては、なんとも思わなくなっていたことが、実はどんなに困難で有難いことか、改めて人間として教えられることばかりです。「少欲知足とはこのことか」日本は、もう一度この基本を学びなおしてもいいのではないかと考えさせられました。 当時の子どもたちは、アンコールワットに来た外国人観光客に、うちわであおいだり、音楽を演奏したり、観光ガイドをやったり、さらには、手足がなくなった子どもを見せて物乞いをしていました。 1日1ドルのチップが一家を支える現状に、これから彼らが自立していくためには、ちゃんと教育をしないといけないということを、我々はひしひしと感じたのでした。 直ぐに村の中に完全無料の小学校の建設に動きました。トタン屋根と葉っぱ壁の教室で、3年生までの学校からのスタートでした。2009年までには、雨の日も安心して学べる3教室の立派な「希望小学校」が完成。2011年10月からは6年生まで学べるようになりました。 また同時に、乳児院・孤児院の子どもたちの自立支援活動も開始しました。 移動の車、自転車の支援をはじめ、ポルポト政権下の文化・教育活動の禁止政策により民族の伝統文化の断絶が問題となっていたのをうけて、文化復興・継承のため、民族楽器や舞台衣装の制作といった教育・生活支援を続け、プロ認定の資格を修得させるなど、子どもたちの自立支援活動も成果をあげました。 そして2014年7月13日、希望小学校の卒業式に、日本の国会議員である山本幸三先生、日本大使館の在カンボジア・樋口義広公使が出席して下さり、初めて日本国の要職にある公人を迎えることができました。 地道に活動を継続してきたことが花開いてきたのではないかと感無量です。 第1回のマラソンから今日まで支援を続けていただいている株式会社かねふく 竹内昌之会長、数多くの社員や友人を毎年この小学校に寄せてくださっている新日本製薬株式会社 後藤孝洋社長に感謝します。
〈付録〉カンボジア希望小学校第3回卒業式祝辞
本日は在カンボジア日本大使館を代表して希望小学校の卒業式にお招きいただき、卒業生のみなさんをお祝いできることを心からうれしく思います。 卒業生のみなさん、ご卒業おめでとうございます。ご両親、ご家族の方々もお喜びのことと存じます。カンボジアでは様々な事情で小学校を最後まで続けることができない子どもたちがまだ多い中で、みなさんがこうして最後まで頑張って無事卒業を迎えられたことは実に素晴らしいことです。これもご家族と関係者のみなさまの理解と協力があってこそと、心から敬意を表するものであります。 この希望小学校は、緒方校長先生をはじめとする多くの人々の努力と支援によって設立、維持されています。どうぞこうした方々の温かい協力を忘れないでください。 日本政府はみなさんが生まれる前からカンボジアの国造りのために様々な支援を続けてきています。例えば、地雷や不発弾を取り除き、農地や灌漑を整備し、道路や電気を通し、病院や学校を整備してきました。みなさんの周囲をよく見れば、必ずどこかに日本からの協力を発見することができるでしょう。それだけ、カンボジアと日本は近い関係にあるのです。 国造りの要諦は人造りだと言われます。ここカンボジアでも、その将来を担う人材を育成することが益々急務になっています。 みなさん、志を高く持ってよく勉強し、将来のカンボジアを担う人材となってください。そして是非、日本についても勉強してみてください。最近は多くの日本企業がカンボジアに投資をしています。日本語を学ぶことは将来に役立つでしょう。また、日本に留学して様々な学問を学ぶこともできます。 みなさんの将来にはたくさんの可能性が開かれています。そうした可能性に積極的に挑戦し、将来を自ら切り開き、カンボジアの国造りにも貢献できるような人材に大きく成長して欲しいと思います。そして、みなさんが、日本とカンボジアの架け橋になってくれればこれ以上の喜びはありません。これは私だけでなく、この卒業式に参加されているみなさまの願いでもあると思います。 最後に、卒業生とご家族、校長ならびに関係者のみなさまに改めてお祝いの言葉を申し上げて、私の挨拶とさせていただきたいと思います。
〈付録〉カンボジア希望小学校第3回卒業式祝辞
この度、希望小学校の卒業式に出席することができまして、大変嬉しく思っております。この小学校は、こんなにたくさんの素晴らしい子どもたちを教育し、そして、今回は6名の卒業生を出されて、とても素晴らしいと思います。しかも3回目と聞いています。これもひとえに、緒方校長先生をはじめ、先生方みなさんのご努力の賜物と心より敬意を表します。 また、新日本製薬の後藤社長、T&Yの竹岡社長をはじめ、ご支援されている各企業およびそのスタッフのみなさんにも、心から感謝を申し上げます。さらに、今回は、日本大使館の樋口公使までわざわざこの卒業式にご出席くださり、本当にありがとうございます。 卒業生のみなさんに、ひとことお祝いを申し上げます。 この世の中には、不公平に思うようなことがたくさんあります。それはみなさんが成長されるにつれて、だんだん感じてくるようなこともあるだろうと思います。でも、神様は1つだけ誰にでも平等なものを与えてくださいました。それは、1日は24時間ということです。 この1日24時間というのは、権力者にも弱い立場の人にもまったく平等です。それをどう使うかが、将来のすべてを決めることになります。それには、大人も子どもも関係ありません。どれだけ有効に時間を活用して、少しずつでも勉強を続けていくことができるか、それによって、あなた方の将来は大きく開けてきます。これからも、その努力をぜひ続けていただきたいと思います。 最後に、卒業生のご活躍と希望小学校の益々の発展をお祈り申し上げて、私の挨拶の言葉に代えさせていただきます。 ありがとうございました。 国造りの要諦は人造りだと言われます。ここカンボジアでも、その将来を担う人材を育成することが益々急務になっています。 みなさん、志を高く持ってよく勉強し、将来のカンボジアを担う人材となってください。そして是非、日本についても勉強してみてください。最近は多くの日本企業がカンボジアに投資をしています。日本語を学ぶことは将来に役立つでしょう。また、日本に留学して様々な学問を学ぶこともできます。 みなさんの将来にはたくさんの可能性が開かれています。そうした可能性に積極的に挑戦し、将来を自ら切り開き、カンボジアの国造りにも貢献できるような人材に大きく成長して欲しいと思います。そして、みなさんが、日本とカンボジアの架け橋になってくれればこれ以上の喜びはありません。これは私だけでなく、この卒業式に参加されているみなさまの願いでもあると思います。 最後に、卒業生とご家族、校長ならびに関係者のみなさまに改めてお祝いの言葉を申し上げて、私の挨拶とさせていただきたいと思います。 |