2011年11月23日〜24日:メラピーク激闘記録 ●11月24日 この日は午前2時起床。3時からの朝食では頭もすっきりとし、食欲も出た。5800mのハイキャンプでいただく脱穀米のおかゆも、梅干しも沢庵もとても美味しかった。貫田さんが作ってくれた松茸風味のお吸い物の温かさがありがたく、涙とともにすべていただいた。 午前4時の出発までのあいだ、テントの中で貫田さんの手際は、酸素の力で回復した私にしっかりと刻み込まれた。ザ・ノースフェイスのテントの機能性はチョモランマへの登頂を可能にする理由の一つである。その装備の重要性を身近で勉強することが出来た。 すこぶる好調にメララまで下りる。昨日の苦しさが嘘のようだった。ちょうど太陽が右手から昇り、下山ルートに沿うように光線を届けてくれる。風は真後ろから僅かに吹くだけで、歩みを止めない限りその存在には気がつかない。夜明けを迎えた山の冷気、この美しさ。これを体験するためにみんな山に登るのだな、との想いを私はアリタさんに告げた。 クレバスの間を注意しながら進む。急坂の手前でアイゼンを装備した。我ながらよくこんな場所を登ってきたものだ。この辺りで左膝と右腰がビリビリ震え始めた。とにかくゆっくり、ゆっくりと自分に言い聞かせるように下っていく。 私の足下を赤いくちばしをしたカラスのような鳥が、チョコチョコ歩いている。さらには雷鳥の仲間もやってきて、地面を突きながら遊んでいる。それを眺めている私に、貫田さんが「絶対に美味しそうなんて言ってはいけませんよ」と告げた。「自分は必ず一回は食べてみますけど」 青、白、赤、緑、黄色の旗が風になびいていた。ラジオからはネパール語の音声が聞こえる。そこにヘリコプターの轟音が加わった。レスキュー隊だとのこと。すぐに頭上を飛び去っていった。暖かな日だまりの中で三浦隊の到着を待つ。空には雲一つなく、雪に覆われた名峰が今日は殊更に優しく起立して見える。メラ山頂もにっこり微笑んでいるようだ。 午後4時。アリタさんがポットを二つ持ってメラ山を登っていった。もうすぐ三浦隊が下りてくるのだろう。「凄いですね。この時間になっても雲が一つもない」と川名さんが呟く先で、ヤクが一匹走って行く。 午後5時を回った頃、峠に三浦隊が姿を現した。ちょうど夕陽がメラの頂上を射している。赤いヤッケと青い帽子を被った雄一郎氏がゆっくりと歩いている。その後ろにスキー板を背負った豪太氏。 ここにいる全員に私は感謝する。皆さん、ありがとう。必ず恩返しいたします。 |